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特定非営利活動法人ふわり
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NPO 法人ふわり キックオフセミナー

 日時:平成23年7月2日(土)   場所:あいち健康の森 プラザホール
7月2日に行われた「NPO 法人ふわり〜キックオフセミナー」の中から講演の内容をご紹介します。
 障がい分野には、「社会起業家」と呼ばれる人材が多く存在します。東京工業大学で、日本中の著名な福祉系起業を調査し、成功の法則を見出す意欲的な研究をされた露木真也子さんに、その「キモ」をお聞きしました。

社会起業家が障がい者の働くをイノベーションする 〜そのキモを紐解く〜


 




講師 露木 真也子氏
株式会社 公共経営・社会戦略研究所 主任研究員

 

社会起業家とは


 社会起業家の事例を取り上げたものに社会イノベーション事例集というものがあります。これは私が東京工業大学にいました時に政策にかかわったもので、2008年版と2009年版が出ています。ホームページではPDFファイルが公開されています。2008年版の事例集には今日の講演のお話をいただきましたむそうの戸枝さんも取り上げさせていただいております。
 皆様は現場の第一線でご活躍されている方々ですが、私は研究者という立場から社会起業家や社会イノベーションをどう捉えていくのかを最初に定義しなければなりません。私は学位論文で「社会起業家とは、社会的課題に対し、解決の意志をもって新規の事業アイディアを創出し、当該事業アイディア実現のための事業基盤の持続性確立を目指し、手元の資源に制約を受けることなく、主体的に実践に取り組むことによって、当該事業の普及と普及による社会変革の担い手となる一人または複数の人物である」と定義しました。社会起業家のさまざまな取り組みの中から新しい仕組みや新しい価値観が生まれてきます。これらが普及することによって社会イノベーションに至ると考えています。
 どうして普及という言葉が出てくるのかというと、社会起業家がいくら新しいアイディアを生み出したとしても、それを多くの人が受け入れない限りイノベーションにはなりません。単にアイディア止まりということです。多くの人に受け入れられて、多くの人の価値観が変わること。それが社会のシステムを変えることにつながっていくわけです。なので、社会イノベーションを研究する上では普及という観点がかかせません。
 お示ししている図は普及理論研究の第一人者であるアメリカのエベレット・M・ロジャースが提唱したイノベーション普及理論ですが、彼は需要者のタイプを5つに分類しています。新しいものを採用するのが早い順にイノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティー、レイト・マジョリティ、ラガードといいます。イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティーを足すとちょうど50パーセントになり、ここを超えるかどうかが社会への普及目安になります。


事例を読み解く3つの切り口


 普及という視点からイノベーション・タイプ、普及志向と普及手法、普及過程を分析します。
   
 ①イノベーション・タイプ
 イノベーション・タイプには組織モデル、プログラム、理念の3種類があります。組織モデルは、同一の目的をもつ一組織として人員や資源を拡張するタイプです。プログラムは、同一の組織ではなく、共通の目的をもった運動のような形で人員や資源を拡張していくタイプです。理念は、特定の目的に資するためのガイドラインあるいは価値観の普及・啓発という形態をとるタイプです。
 ②普及志向と普及手法
 次に普及志向と普及手法です。まずは普及志向ですが、これにはScaling Deep(深密型事例)とScaling Out(拡張型事例)があります。Scaling Deep 志向とは、地域コミュニティにおいて、より大きなインパクトを達成することにエネルギーと資源を集中させる形で事業規模を拡大していくような普及志向です。ただし、取り組みの成果やどれだけのインパクトを生み出しているかを具体的な単位で計ることが極めて難しいケースが含まれます。Scaling Deepの普及手法は、提供するサービスの質の向上、ターゲット顧客人口の拡大、新規サービス開発、新たな顧客グループへのサービス拡大、革新的な財務・運営方法、当該分野での先例となることです。
 反対に、Scaling Out 志向は、運営主体やその子組織、連携組織の数や規模といった具体的な単位で、インパクトを拡大した成果が観察できる普及志向です。比較的事例研究では取り上げやすいといえます。Scaling Out の普及手法は、拠点複製、連携、電波になります。
 ③普及過程
 普及過程については、イノベーター・ステップ(アイディアが創出された段階)、アントレプレナー・ステップ(持続性が確立された段階)、ディフュージョン・ステップ(普及の段階)に分けられるであろうと考えています。
 さまざまな社会イノベーション事例があるわけですが、学術的な研究をしていこうと思いますと、ある程度比較対象を絞り込む必要があります。それで私が学位論文研究の中で行いましたのが、障がい者の就労支援分野に限定した事例研究です。論文でははらから豆腐、プロップ・ステーション、むそう、がんばカンパニー、!-style(エクスクラメーション・スタイル)、ぱれっと、こころん、板橋ノーマライゼーションクラブの8つの事例を取り上げました。この中からいくつかを分析的にお話ししていきたいと思います。


事例1 はらから同府


 はらから豆腐の事業主体は社会福祉法人 はらから福祉会で、社会起業家は理事長の武田元さんです。事業主体である社会福祉法人はらから福祉会は、宮城県内に就労支援・授産施設を8か所、グループホームを9か所運営しています。就労支援施設の中で最も規模が大きいのが蔵王すずしろという豆腐・湯葉製品の製造工場です。ここでは宮城県産の大豆を使って、技術に熟練を要するにがり豆腐を作っています。豆腐の値段は1丁210円と、一般に売られているものと比べると約2倍ぐらいしますが、高品質なにがり豆腐ということで地元ブランドになっています。蔵王すずしろだけで1億円を超える年商を売り上げ、法人全体では4億円に達する成果をあげています。また、豆腐の製造・販売だけでなく、豆腐作りの過程で抽出した豆乳を障がい者施設に販売するなど、手づくりとうふ工房という形でそのノウハウを全国に広げています。
 はらから福祉会のイノベーション・タイプは組織モデル、普及志向はScaling Out志向、普及手法は連携になります。普及過程を見ていきます。
 イノベーター・ステップ
 理事長の武田さんはもともと養護学校の教員をしていましたが、オイルショックによる不況の影響で卒業生たちが職や居場所を失い、自ら命を絶つなど人生を悲観してしまう人たちが多く出てきました。これはなんとかしなければいけないと無認可の作業所を設立し、日々の収入を得ていけるようなアイディアを摸索しました。
 アントレプレナー・ステップ
 当初は陶器を販売していましたが、それは爆発的に売れるわけでもなく、コンスタントに売れるわけでもありませんでした。ならば、どうやったら持続的に売り上げを伸ばすことができるのか。10年ほどかかって見い出したのが豆腐という商品でした。そして、無認可から社会福祉法人の認可を得て、組織としても基盤を固めていきました。
 ディフュージョン・ステップ
 そこからは売り上げがコンスタントに伸びています。すでに普及段階に至っている事例と見ることができます。

事例2 プロップ・ステーション


 これもはらから豆腐と同じScaling Out志向の事例になりますが、広がり方が若干異なります。プロップ・ステーションの社会起業家は理事長の竹中ナミさんで、ICTのセミナーなどを行い、パソコンを使った在宅就労の事業モデルを構築しています。株式会社フェリシモと連携し、チャレンジド・クリエイティブ・プロジェクトの取り組みを展開しています。フェリシモは非常に多くの作業所と連携していますが、プロップ・ステーションとのコラボレーションが起点になっているとうかがっています。はらから豆腐の場合との違いは、イノベーション・タイプが組織モデルではなくプログラムであることです。障がい者の就労支援を企業との連携によって広げていった事例だと分析しています。普及過程はこちらです。
 イノベーター・ステップ
 自らも重い障がいのある娘さんを持つ理事長の竹中さんは、ボランティア活動を通じて、アメリカと日本はどうしてこんなに障がい者の福祉制度が違うんだと大きなカルチャーショックを受けました。日本でも障がい者が有償のアテンドを雇えるような仕組みにしなければいけないという強い思いから、草の根グループとしてプロップ・ステーションを立ち上げました。障がい者が自立していくためにはサポートが必要ですが、その料金はやはり働いて稼がなければなりません。障がいがあってもスキルさえあればお金は稼げるのではないかということで、最初にパソコンのセミナーに取り組みました。
 アントレプレナー・ステップ
 阪神淡路大震災が起こりました。プロップ・ステーションのスタッフも竹中さん自身も被災されましたが、この時、パソコンセミナーでICTスキルを身につけていた障がい者の方たちが、パソコン通信を使って安否確認などの情報を交換する様子がマスコミに大きく取り上げられました。こんな活動ができるんだと一気に支援の輪が広がりました。
 ディフュージョン・ステップ
 社会福祉法人としての基盤が固まった後、フェリシモの社長との幸運な出会いからチャレンジド・クリエイティブ・プロジェクトを立ち上げました。2008年からは神戸スウィーツ・コンソーシアムをスタートさせています。これは地元の製菓企業と連携し、障がいのある方をパティシエとして要請しようという取り組みで、卒業生が次々に輩出されています。

事例3 ぱれっと


 これは前半の2つとは違い、明らかなScaling Deep 志向の事例となります。ぱれっとの社会起業家は谷口奈保子さんです。東京の恵比寿エリアを拠点に、職住近接型のまちづくりとして障がい者福祉に取り組んでいます。まちづくりと言いながらも追及しているレベルは非常に高く、Restaurant and Bar Palette は就労の場であるからには普通の会社と同じ環境でなければならない、という谷口さんの信念から、株式会社で運営されています。ぱれっとは障がい者福祉の草分け的な存在であり、代表例でもあります。したがって、普及手法は当該分野での先例となることが当てはまるだろうと考えています。普及過程です。
 イノベーター・ステップ
 谷口さんは娘さんを小児がんで亡くされたことをきっかけに福祉を改めて学びました。その過程で障がいがあっても前向きに生きている子供たちに心を打たれ、ボランティア有志の方たちと一緒にたまり場ぱれっとを設立しました。
 アントレプレナー・ステップ
 そこから持続性確立のための取り組みとして、クッキー工房、レストラン、グループホームを開設しています。恵比寿というエリアの中に一つの生活空間を構築しつつあるのがぱれっとの事例です。
 ディフュージョン・ステップ
 Scaling Deep 志向の事例についてはインパクトの拡大成果が観察できないことから、普及段階に至ったかどうかがはっきりとは言えません。ディフュージョン・ステップは省略しています。


事例4 がんばカンパニー


 事業主体は社会福祉法人 共生シンフォニーで、社会起業家は常務理事の中崎ひとみさんになります。がんばカンパニーは滋賀県を拠点にクッキー工房事業に取り組んでいます。中崎さんは障がい者福祉の分野でも事業を通した社会貢献活動をしていくべきだと考え、オーガニックやフェアトレードの原料を積極的に採用していこうと活動しています。がんばカンパニー全体の年商は1億円前後で推移しています。
 イノベーター・ステップ
 共生シンフォニーはもともと無認可の共同作業所でしたが、ボランティアで参加されていた中崎さんからビジネスの知識やノウハウを伝授してもらい、利用者に契約に基づいた賃金を払えるようなシステム作りに取り組みました。
 アントレプレナー・ステップ
 1999年にクッキー工房を母体である共生シンフォニーから切り離し、がんばカンパニーが誕生しました。工場では製造ラインを遊ばせておくのはもったいないということで、オーガニッククッキーを作っていない時には一般事業者の下請けをしています。しかし、2本立ての工場運営は非常に複雑であり、なかなか事業の持続的な基盤が固まらないままここ数年は努力を続けている状況です。
 ディフュージョン・ステップ
 Scaling Deep 志向の事例ですので、インパクトの拡大が読み取りづらいのですが、今は普及段階のちょうどボーダーラインにあるのではないかと考えています。ただ、がんばカンパニーの業態ははらから豆腐の事例と極めてよく似ているとお気づきになられたかもしれませんが、どちらも障がい者の作業所でありながら、民間の食品製造業者と同様に一般の流通ルートに乗せて商品を販売しています。極めてScalingOut 志向に近い事業モデルであるといえます。ディフュージョン・ステップに至った時にはScaling Out 志向になっている可能性が非常に高い特殊な事例ではないかと考えています。

イノベーションを実現させるためには


 社会イノベーションという観点から障がい者の就労支援事例を考えた場合、キーワードとなるのは普及と持続可能性です。最初のほうでご紹介しましたロジャースのイノベーション普及理論の中では、イノベーション普及にかかわる主要な4つの要素をイノベーション、コミュニケーション・チャネル、時間、社会システムであると述べています。この4つの要素のうち、特にコミュニケーション・チャネルが重要です。自分の所だけでしかできないことをそれぞれが持っています。それらがつながった時に大きな相乗効果ができてきます。いかにして普及に至るようなネットワークを作るのかが重要なポイントです。
 もう一つは持続可能性です。事業モデルの持続可能性ということでは、イベントのような形で単発で終わってしまうアイディアは継続が難しく、特に就労支援事業の場合には継続的に賃金を払っていかなければならないわけですから、コンスタントに収益を上げられる事業であることが求められます。社会システムの持続可能性ということでは、障がい者就労支援というのは福祉制度とも密接に絡み合っており、制度そのものが合理的に続けていけるような仕組みになっているかどうか。そういった視点からも見ていく必要があります。新たに生まれてくる事業モデルが政策的なインパクトを及ぼし、障がい者福祉制度をいかに変えていくかにかかっているでしょう。




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