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特定非営利活動法人ふわり
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NPO法人ふわり キックオフセミナー

平成23年7月2日(土) あいち健康の森 プラザホール
7月2日に行われたセミナーの中から講演の内容をご紹介します。

CBRをご存じでしょうか?
 障がいのある方を地域の社会サービスで包括的に支援する、世界約90カ国で活用されている方法です。
 日本障がい者リハビリテーション協会で国際協力活動に取り組まれている上野悦子さんにCBRについてお話しいただきました。

街ぐるみ包括福祉の時代がやってくる! 〜全員参加の仕組み作り〜




 講師 上野 悦子氏
 財団法人日本障がい者リハビリテーション協会 国際部長



途上国の2枚の写真


◀バングラデシュの地方都市
 今日は途上国で行われているCBR(Community Based Rehabilitation:地域に根ざしたリハビリテーション)に関してお話しします。私たちの団体では1990年代からCBRの支援を行ってきました。具体的にはインドネシアのジャワ島にあるCBR開発研修センターにて研修を実施し、この分野の第一線に携わっている人たちのほとんどがこのセンターの研修を受けています。また、日本国内ではJANNET(障がい分野NGO連絡会)が1993年に設立されました。
 
 ◀バグラデシュの農村風景
 ここで2枚の写真を見ていただきます。暗くてわかりにくいですが、これはバングラデシュのジェソールという地方の中型都市です。ここからたくさんのことを読み取ることができます。左側には人力車を改良した自転車タクシーが見えます。右側は車が走っており、道路も舗装されています。真ん中に男性がいますが、その手前にあるのはくぼみだと思います。このように舗装されていない所では道路がガタガタしています。先進国から途上国に中古の車椅子を寄贈するという活動がありますが、こうした道路事情の所ではキャスターがすぐに壊れてしまいます。
 他に何か気づかれますか? この写真には街灯がないんです。2008年に首都のダッカに行きましたが、繁華街を少し離れると真っ暗な中で明かりが付いているのは大きなレストランとテニスコートの2箇所だけでした。次にご覧いただくのはバングラデシュの農村風景の写真です。これからお話しすることはこの2枚の写真を念頭においてお聞きいただければと思います。


CBR はどのように発展してきたのか


 
 まずは障がい者に関連する状況を見ていきます。障がい者数ははっきりわかっていませんが、2011 年6 月にWHO と世界銀行が発表した世界障がいレポートによりますと、世界の人口の約10パーセントが障がい者で、そのうちの5 分の1 は非常に困難な状況にあると述べています。国連の障がい者権利条約の批准国は6 月現在で101 カ国、そのうちアジア太平洋地域は14カ国となっています。もう一つ、途上国のことを見る際に忘れてはならないのが2000 年に作られたミレニアム開発目標です。そしてCBR は90カ国以上で実施されています。
 CBR は発展途中であると言われています。というのも、障がい自体がまだまだ発展途中である概念だからです。では、どこまで到達しているのかを見ていきます。1978 年にWHO は「2000 年までに全ての人に健康を」というアルマ・アタ宣言を採択し、80年代にCBR のマニュアルを作成しました。それにより、CBRはいろいろな国で実践されるようになりましたが、その一方でやり方にばらつきが見られたことから、1994 年にWHO、ILO、ユネスコが合同で政策方針を出しました。2004 年には合同政策方針の改定版が、2010 年にはガイドラインが作成されました。
 CBR とは障がいのある全ての人のリハビリテーション、機会均等化およびソーシャルインクルージョンの地域社会開発全般における戦略の一つであると定義されています。そして、保健、教育、生計、社会、エンパワメントというカテゴリーに基づき、さまざまな活動をしています。ガイドラインは7 つの小冊子で構成されており、福島県の社会福祉法人 こころんが日本の事例として紹介されています。
 CBR の目的は地域に根ざしたインクルーシブ開発です。WHO では地域社会開発を、貧困もしくは生活に影響を及ぼすあらゆる種類の共通問題を克服するために、地域社会のメンバーの結束を支援する一連の価値観と実践であると述べています。原則としてあげているのは参加とインクルージョンです。


カンボジアでの住民による知的障がい者支援事業


  
地域社会開発とCBR に関する事例をご紹介します。これはカンボジアでの住民による知的障がい者支援事業です。知的障がい者の場合、一生涯に渡って何らかの支援が必要になってくるわけだから、知的障がい者にこそCBR は必要なんだ。そうした強い思いをもって取り組んでいる団体が、社団法人 日本発達障害福祉連盟です。自己財源を使って2003 年に事業を開始し、2007年からは外務省のNGO連携無償資金協力事業として活動を継続しています。
 活動の概要を見てみますと、地域住民たちによる話し合いです。そのためのミーティングを1年間に200 回以上開きました。一村あたりでは月一回集まっていたようです。一体何を話していたのか、一例をお聞きしましたところ、この地域では知的障がいのある女性へのレイプが絶えず、村の人たちもレイプを悪いことだと思っていなかったそうです。それを一つ一つ丹念に話し合い、ついに村の人たちもレイプはいけないことなんだと自分たちで理解するようになったということです。
 福祉連盟は村のファシリテーターを育てる研修をしています。研修を終えたファシリテーターは住民に対し、気づきの促しやアクションプランの作成・実施の促しを行います。カンボジアの村の中で知的障がい者を調べてみると、1 日中何もすることがないという人が半分以上いることがわかりました。何ができるのかを一緒に考えた結果、農作業が一段落した後のお昼の準備をしてもらうことにしました。村の人たちが自分で考え行動しない限りはこうしたことは動きません。こういうことをしなければだめですよと説明しても、自分のものにならなければアクションになったかどうかは疑問です。
 そして、それは共同で農作業をするというプロジェクトに発展しました。そのための費用として住民から福祉連盟に提案のあった金額は60アメリカドルでした。福祉連盟は30ドルだけOK したそうです。残り30ドルは自分たちでなんとかしたようで、村人はその気になればいろいろとできるのではないかということもわかったようです。


地域に根ざしたインクルーシブな開発


  
 国際協力とCBR ということで、WHOによると先進国ができるアプローチは理学療法、福祉機器、外科手術、教育、トイレ、バリアフリーの環境、職業訓練等です。では、途上国の人々が必要とするものは何でしょうか。まずは所得がきています。それから、食料、衣類、よりよい住宅とトイレ、水と続き、治療、福祉機器などは最後のほうにきています。先進国が行っているのは理学療法や福祉機器ですが、途上国で必要とされているのはその逆です。これには目が見開かれる思いをしております。
 CBID(Community-Based InclusiveDevelopment:地域に根ざしたインクルーシブな開発)のための実践アプローチです。これにはツイン・トラック・アプローチが必要といわれています。上の四角にあるのは障がいに特化した支援ということで、リハビリテーション、障がい原因の予防、福祉機器、障がい者のエンパワメント、能力開発の研修、就労、教育、福祉施設、団体強化、子供への早期介入になります。それに対し、下は一般のプログラムの中に障がいの視点を入れていこうということで、インフラのバリアフリー化、ユニバーサルデザイン、コミュニティーの人たちへの理解の促進などがあります。
 障がいに特化した支援というのは大変わかりやすく、先進国の人もやりやすいのですが、メインストリーミングは他分野に渡る連携が求められることからなかなか進んでいないのが現状です。真ん中に双方向の矢印があるのは、これらは両方とも必要であって行き来するものだということを表しています。


バングラデシュのCDD の事例


 次に事例を見ていきます。バングラデシュの面積は14万4000 平方キロメートル、人口は1 億4100 万人います。75パーセントが農村で、44.3 パーセントは貧困状態です。障がい者数は700 万人から1400 万人と推定されていますが、そのうちサービスを受けている障がい者数は都市部の中での2 パーセントしかいません。一方、開発全般を行っているNGO の数は3 万と言われています。

 CDD(Center for Development in Disability:開発における障がいセンター)は、1996年に設立されました。スタッフ60人で、代表はノーマン・カーンさんです。このノーマン・カーンさんは2010年にアジアのノーベル賞とも言われているマグサイサイ賞を受賞しました。CDDでは、開発における障がいへのコミュニティーアプローチを実践しています。対象者は開発組織です。
 研修では、まずは開発組織のトップを呼んで障がいに関する理解を深めてもらい、ワーカー研修を受ける人を開発組織の中から選んでもらいます。ワーカー研修では基礎的なリハビリテーション研修を6カ月間行います。もう一つはソーシャル・コミュニケーター研修です。これはワーカーと切り離しているんですが、地域住民の中には文字を読めない人もたくさんいますので、紙芝居のような絵を用いて障がいを理解してもらう活動を推進しています。
 これは2005年にCDDが出しているデータです。研修を受けた開発組織の数は307で、8万5000人の障がい者のうちサービスを受けたのは5万2000人、基礎的リハビリテーションサービスは2万人、補助具をもらったのは1万2000人、開発活動に参加したのは2万8000人、技術訓練は7000人、収入創出のための少額融資を得たのは1万3000人となっています。NGOの数が3万もある中でたった307という考えもあるでしょうが、307とのパートナーシップを組んでいるのは一つの成果だと思います。CDDは今後の課題として、研修の質の向上、研修センターが今はダッカにしかないので地方でも研修を受けられるようにすることなどをあげています。


インドのモビリティ・インディアの事例


    
 次にインドの例を紹介します。インドは328万7000平方キロメートルの面積の中に12億1000万人が住んでいます。バンガロールはインドの南中央部の高原地帯で、人口は620万人、標高は920メートルあります。ITの町として知られていますが、その一方でCBRも非常に盛んな所です。JANNETでは2010年1月に現地研修会をしてきましたので、その時の様子をお話します。
 モビリティ・インディアという義肢装具センターと、ベーシック・ニーズという精神障がい者を支援している2つのNGOを訪問しました。モビリティ・インディアの理念は障がい者が平等な権利をもって、豊かな生活を送れるインクルーシブな社会を実現すること、支援対象は障がいのある貧困者、女性、子供です。活動内容はリハビリテーションサービス、人材養成、都市スラムや農村でのCBR、補助器具の開発と推進、パートナーシップ、啓発となります。
 モビリティ・インディアのCBRの一例ですが、女性障がい者たちが義肢装具工房を運営するまでの連続支援です。その結果、訓練を受けた女性障がい者は実際に働いて収入を得るようになりました。なぜ女性かという疑問もあるでしょうが、義肢装具を作るには肌を見せて計測しなくてはなりません。男性の義肢装具士ではどうしても遠慮してしまうこともあり、女性の義肢装具士というのは非常に需要があるそうです。
 もう一つ面白いと思うのがトイレプロジェクトです。カルナタカ州のチャマラジャナガーは非常に貧しい地域で、基本的な衛生が保たれず、住民への悪影響も出ていたそうです。インド政府はトイレ設置費用の一部を負担していましたが、なかなか普及しません。そこで、モビリティ・インディアは地域ネットワークを動員し、トイレの必要性を街頭演劇や壁に絵を描くなどして住民に理解してもらう活動をしました。そして、障がいのある人がいる貧しい家庭を選んでトイレ設置を行いました。トイレプロジェクトの結果、50のアクセシブルなトイレが作られたそうです。障がいのある人は衛生と尊厳を保てるようになったといいます。ここでのポイントは障がい者のニーズを周囲の人たちに知らせ、資源や人を動員したことです。


インドのベーシック・ニーズの事例


  ◀BasicNeeds 支援の精神障害者連合の集会
  
◀バンガロール都市部のスラム
 ベーシック・ニーズはバンガロールの都市部のスラムと農村で精神障がい者の支援をしています。権利に基づく活動、CBR相談、技術的支援、啓発といった全活動にメンタルヘルスを取り入れています。ただし、資金提供はしていません。先ほどのCDDと同様に、中間組織的な役割を果しています。そして、障がい者の自助グループ作りを支援しています。
 パートナー団体は何をしているのかというと、障がい者の自助グループの連携促進、専門的サービスへの仲介、マイクロファイナンスによる小規模事業などです。文化的な背景として、人々が集まって話をするという習慣が昔からあるようで、そうしたことが、障がい者の自助グループ作りに役立っているとも考えられます。
 次の写真はバンガロールの都市部のスラムです。真ん中で車椅子に乗っているのは私たちが一緒に行った時の仲間です。こちらは精神障がい者のグループが集会をしています。連合会を組織した時の様子で、真ん中の白いシャツを着た男性は母親が統合失調症だったそうですが、いろいろな支援を経て、現在では精神障がい者団体連合会の事務局長をしています。


今後について


 CBRの課題をみていきます。まずは継続性です。継続性のためには分野を超えて連携していくことです。障がい者の問題には、行政がかかわること、地域社会開発活動への組み込み、障がい者団体の参加、その他のNGOとの連携も重要です。もう一つは証拠に基づく研究・調査が少ないことです。CBRの効果を示す証拠は少しずつ増えてきていますが、なかなか周囲を説得させるだけの結果が出ていません。また、CBRがうまくいくためには事前の準備期間が必要です。住民との関係作り、ニーズの把握、社会資源の開拓、社会を変革するイノベーティブな構想がかかせないからです。先進国の援助にはこうした準備期間への支援が含まれていない場合もあります。
 最後に日本で学ぶ国際協力のあり方を考えてみますと、途上国の緊急支援にいち早く駆け付ける団体は、東日本大震災の時にも非常に早くから支援を開始したと報告されています。そして、それらの団体とこれまで国際協力をしていなかった団体との連携が芽生えています。難民を助ける会は日本障がいフォーラムと情報を共有しながら支援にあたっています。これは今まで見られなかった連携です。午前中のご報告の中で、現地の人が復興の主役なんだというお話がありました。今後、東北での復興がどうなっていくかというのは途上国と先進国の関係を考えていく際にも大変役に立つものと考えます。
 JANNETではメーリングリストやウェブサイトでCBRに関する情報を提供しています。皆様方とも今後つながっていければと思っています。

JANNET: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/index.html


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