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特定非営利活動法人ふわり
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街の中でふわりふわりと考えるVol.34 「ネットの網目をすり抜けて落ちる人達」

NPO 法人ふわり 理事長 戸枝陽基



 名古屋駅には、太閤口という面白い名前の出口がある。日本の歴史上、最高の立身出世を果たした豊臣秀吉の出生地、名古屋市中村区に面しているので、秀吉の通称から取って、この名前らしい。

 ある日、その太閤口を抜けて、外の広場も通り抜けようと歩いていた僕は、ある一人のホームレスの方を見て、衝撃を受けた。

 この太閤口。地下街に面しているので、雨露がしのげる上に、冷暖房の恩恵が受けられ。何より、周辺に飲食店が多くて生活に必要なものが確保がし易いので、ホームレスの方がいること自体は、特に珍しくはない。

 それなのに、その一人のホームレスの方に衝撃を受けた訳は。その人が、手のひらをヒラヒラさせ、その動きをじっと見つめながら、身体を前後に揺すっていたからだ。

 その動きは。「ロッキング」に間違いなかった。自閉症の人は、時に人から見ると無目的に見える反復行動を繰り返すことがある。「ロッキング」は、その中の1つで、「ロッキングチェアー」の如く、頭を振りながら自分の身体を前後に揺する行動をいう。

 急いでいた僕は。視線だけ、彼を凝視しながら、横をすり抜けた。 
 髪が伸び、髭がうっすら生え、幾日も風呂に入っていないことがわかるその風貌。強い心の揺れを感じながらも、薄情な僕は、足早に、彼の横を通り過ぎたのだ。

 それ以来。何度通っても、太閤口に彼はいない。彼の行く末を案じながら、どうして、知的障害のある自閉症の人が路上にいたのか。それを考え続けるようになった。彼の姿が頭に焼き付いて離れない。どうして、どうしてなんだろう。

 その答えを、きっと持っていると思ったので。湯浅誠さんに、どうしても会いたかった。貧困問題について、強烈に社会に発信する活動家。彼ならば、答えを持っているのではないかと思った。

 「発達障害や知的障害を持っている人が、ホームレスに多いのは間違いないと思いますよ」やっと会うことができた彼は、新宿の喫茶店で、思案顔でそう言った。
 「知的障害の判定が出る人が3割以上。発達障害があるとなると、相当な確率でしょうね」彼は、やはり、その問題に気付いていた。

 「そうだとして。それぞれの人の障害の特性というか、何に配慮しないと就労が続かないとか、生活が困難に再びなるとか。湯浅さん達ホームレス支援をしている人達は、きちんと見立てをした上で、動いていますか?」僕が1番聞きたかったことを聞いてみた。

 「そうそう。それが、大きな課題になっているんですよ」湯浅さんが、困り顔で、そう答えた。
 「もう、この国でも、きちんとそういった人達の見立てが出来るプロがいるんですよ!その人達と湯浅さん達とが連携すれば、より多くの人が、その可能性を生かされると思うんですよ!」僕が、そう言うと、湯浅さんがうれしそうに、深く頷いた。

 僕達は、出会うべきだと。そう思った。

 この国は。消費税の増税とか、介護保険料上げとか、いろいろやることをやったとしても。もう、すでに借金まみれ、超少子高齢化が止まる訳でなし。放っておくと、たくさんの人がホームレス化して行く可能性があるだろう。

 そんな状態では、発達障害の人が、新たに直接サービスの対象になるという展望よりは、今、直接サービスを利用して暮らしている障害者の中からも、その傘から漏れる人が出ると考える方が、リアルじゃないだろうか。

 そうだとして、どうするのか。

 だから。僕達はみんな。ホームレスの方を、今、どうするのかを考え行動しないといけないのだと思う。その具体的行動が、すべての人の将来のセフティーネットになるのだと思うから。

 発達障害の、知的障害の福祉関係者が張り巡らしたセフティーネットの網目をすり抜けた人達から、ホームレスが生まれている事実に。とりわけ、僕達、障害福祉に携わる人間は、何らかの答えを見つけないとダメだ。

 僕達が、手帳があるとか、ないとか。そういう次元で物事を考え、仕事をしているのでは。この国の社会保障は、もう、持ち堪えない。

 あの日、忙しさをいい訳に、彼の横を急ぎ足に通り過ぎた僕では。今、責任を負っている障害のある方の未来も、開いてあげることは、出来ないのだ。まず、僕の心の弱さを変えよう。



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