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特定非営利活動法人ふわり
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街の中でふわりふわりと考える

Vol.29 「叱ると諭すの境界線」戸枝 陽基


 中学生の時の話。気が散りやすく、集中することが苦手だった僕は、絵を描くのは大好きだけれど、最後まで仕上げることができなかった。
 熱心に描くことができる限界は30分位。それを越えてしまうと、描きかけの絵は、放置されるか適当に仕上げられることになってしまう。

 そんな調子の僕だから、絵を描くとして一番苦手だったのが、写生大会というイベントだった。ただでさえ、集中することが苦手な僕に、教室外という刺激だらけの環境。イケな過ぎる。

 気が散るというのが、どういう具合にかというと。例えば、校庭で校舎を描くというお題の写生大会があった年のことを思い返してみると。

 トイレに行ったお友達が戻るまでの間に、そのお友達が描いている校舎の絵の、窓という窓からドラえもんが外を覗いているように描き足さなければならなかったり。
虫を捕まえてきて、女の子のパレットに気付かれないようにきれいにたくさん並べたりと・・・

 そんなことばかりに気が散って、いや、気が行ってしまうのだ。
 そうなると、何が困るって、自分の絵を描く時間がなくなってしまう。
 だからといって、僕自身の絵を提出しない訳にもいかない訳で・・・

 校舎を描くというお題に対して、僕が出した答えは。
 画用紙に横線を2 本シュッと引き。3 分割された横長方形をグラデーションのごとくそれぞれ茶色に塗り。
 作品名「校舎の壁」。制作時間5 分、会心の作。自分で自分の手抜きぶりに半笑い。

 学級委員が、会心の作を集めに来て写生大会終了。当然のごとく。後日美術の先生に呼び出されることになる。

 その後日。職員室に向かいながら。「こちとら、怒られること前提で、やんちゃしてんだから!呼び出しなんて織り込み済みだわ!」とひとり心の中で息を巻く。
 「ちわ?す!」と自分を励ますかのごとく、意識して元気良く入室の挨拶。美術の先生の席へ向かった。
 先生、直立不動の僕をちらりと見る。机の上をごそごそし、僕の会心の作「校舎の壁」を手に持って、ひとつため息をついた。

 「こちとら・・・」心の中で、怒鳴られる覚悟をして。その時間をやり過ごせば、とりあえず、写生大会をすっかりエンジョイしてしまったことが帳消しになるから頑張ろうと思った瞬間。先生は、怒鳴るどころか力ない悲しい声でこうつぶやいた。

 「戸枝君の出す色ってさ。この茶色、どれもすごく優しくて透明感があるきれいな色。先生、好きだなぁ。もっとたくさん、細かくきれいな色で彩られた戸枝君の描いた校舎が見てみたかったなぁ。板が3 枚だけで残念だわ」僕の絵を見詰めたまま、またひとつはぁ?とため息をついた。

 「えぇ?!」僕はひそかに心の中で叫んだ。「なんだよぅ!怒鳴ってくれれば、気が楽なのにぃ!そんなことしみじみと言われたら、すごく悪いことした気がするじゃんかよぅ・・・」

 その日。部活動は休みにしてもらって。真っ暗になるまで、校舎を描き直した。3 時間も熱心に描いただろうか。翌日、その絵を持って行くと、先生はとても喜んでくれた。

 人と向かい合っていると。感情のままに叱らないといけないこともある。でも、諭す方が相手の胸に落ちる。僕も、もう、いつの間にか、あの先生と同じ年頃になってきた。

 先生のように。人を自発的に動かせる人間になりたいなぁと。地域支援を仕事として選んでくれた若い人達を見詰めながら、最近、つくづく思う。

 一生懸命に、自発的に仕事をしてもらうには、どうしたらいいのだろうか。あの日の僕の心の変化にそのヒントはあるのだと思うのだけれど。



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