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特定非営利活動法人ふわり
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街の中でふわりふわりと考える vol.32「つかみ取る心の深み」

NPO法人ふわり 理事長 戸枝陽基


 最近、どうも涙腺が緩い。
 テレビや映画の悲しい場面は、ともかく。新聞のスポーツ面を読んでいて、ちょっとでも、その選手の栄光への苦労を想像したりすると、たちまちに落涙。
 若く、血気にはやっていた頃には、こんなことはなかった。何がそうさせているのだろうか。

 社会福祉法人むそうで1 番見学が多い、アートスクウェア内にある「中華茶房うんぷう」店長、西
畠義浩さんと、日本財団から助成して頂いた、ラーメン移動販売車の実演展示のために、山形に行った。
 幾度か、彼の生活を取り上げたドキュメンタリーがテレビで放送されたので、彼をご存じの方も多いと思う。最近では、見学の方が彼と記念写真を撮って行かれる位有名人になってきている。

 彼には、知的障害と自閉症という障害がある。とりわけ、自閉症は、子どもの頃診断したお医者さんが、「教科書に載せたいくらいの典型的な自閉症ですね」と言った位、シビアな障害がある。
 「社会性・コミュニケーション・想像力」などの成長やとらえ方が、普通の発達とは異なった形で現れる自閉症。彼は、その障害の中で生きている。

 彼は、今でこそ、自発的に発語し、その意味も的確になっているが、僕が出会った小学生の頃は、まったくのオウム返しが多かった。
 「アイスクリーム食べますか?」「アイスクリームタベマスカ?」
 「アイスクリーム食べませんか?」「アイスクリームタベマセンカ?」
 「…どっちやねん!」「…ドッチヤネン!」
 なかなか、彼の意志を読み取ることができず、こちらは思案、彼はイライラ、その結果爆発。そんな繰り返しの子ども時代だった。

 山形から名古屋までの飛行機。彼と隣同士で座った。彼は、窓際に座り、窓に頭をくっつけ、座っている。
 飛行機が滑走路を加速していく。ふわっとした無重力感を感じた瞬間、窓の外の景色が地図状になっていく。

 その瞬間。窓にぎゅっと、頭をくっつけていた西畠さんが、小さな小さな声で呟いた。
 「トビマシタ…」
 そして、微動だにせず、窓に頭をぎゅっとくっつけたまま、地図状の景色が雲に包まれるまで、じ〜っと、外を見ていた。

 しばらくすると、ふいに彼が、こちらを振り返り、「トエダヒロモト君!」と言う。
 「何ですか?」と僕が応じると、満面の笑みで、彼が言った。
 「トンダネェ!」
 彼は、初めての飛行機だった。

 自閉症という障害の困難さに、想像力が弱いという問題がある。僕達が、体験していないことでも、例えば映像を見たり、例えば本で読んだりすると、まるで一度体験したことのように自分の中に取り込めるのに対して、彼らは、体験しないことには、自分のものにすることが困難な場合が多い。

 だとすれば。体験しまくればいい。彼の満面の笑みを見ながら、そう思った。
 うんぷうで。彼は、料理人の仕草や工程を、食い入るほど見つめてきた。そのひとつひとつを模倣し、自分のものにしてきた。そのように。この世のあらゆる事柄を体験し、自分のものにしていけばいい。

 「飛んだ」ということを。彼はその瞬間自分のものにした。次は、何を自分のものにするのだろう。

 そういった体験に寄り添っていく感動の過程こそが、自分達の仕事のやり甲斐なのだと、再確認させられた。
 彼らの人としての成長は、定型的な暮らしや貧弱な体験の中では育まれない。豊かな暮らしを、文化的な体験を、共に育ち合いながら営む過程が地域支援なのだと思う。

 そうかぁ。そう振り返ってみると。両親を失ってから、僕は、親がいないというシチュエーションに弱いなぁ。動物との別れの場面では、16年飼っていた猫を思い出して泣いているし・・・

 体験が深まると、涙もろくなる。それは、共感がする体験が増えるからなんだろうな。
 お互い歳を重ねるのも、悪くないね。義浩さん!


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